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技術・応用Technology / Applications

評価

ArterioVision MS-3000による評価

原理と定義

血圧脈波検査装置ArterioVision MS-3000はオシロメトリック法により、以下の3指標を同時計測します。

  • ABI(Ankle Brachial Index):LEADの診断に用いる足関節・上腕収縮期血圧比
  • PWV(Pulse Wave Velocity):血管壁弾性を反映する脈波伝播速度
  • ASI(Arterial Stiffness Index):カフ直下動脈の中膜弾性率に比例した独自指標

これらの指標はLEADの一次・二次予防に有用であり、ArterioVision MS-3000はその評価機会を提供します。
ASIは杏林大学 嶋津秀昭教授が提唱し、CardioVision MS-2000にて確立された測定方法であり、ArterioVision MS-3000は後継機種となります。ASIはLEAD合併例でも影響を受けにくく、ABIとは独立した指標として評価可能な点が臨床上の優位性をもちます。

測定方法

仰臥位にて四肢カフから血圧脈波を取得し、ABI・PWV・ASIを自動演算します。測定時間は約5分。結果は専用タブレットに記録され、施設用・患者用の印刷レポートを出力できます。

ABI・PWV・ASIについて

各指標の定義

ABIについて

ABIは足動脈の狭窄・閉塞(LEAD)を評価する指標です。左右足首の収縮期血圧を上腕収縮期血圧(高値側)で除して算出します。ABI 0.9以下でLEADと診断されます。

PWVについて

PWVは心臓からの拍動が末梢へ伝わる速度を計測し、血管壁の硬さを評価します。動脈硬化が進行して血管弾性が低下するほど伝播速度は上昇します。baPWV(上腕—足首間)による評価は、数値が高いほど動脈硬化の進行を示します。

ASIについて

ASIは動脈中膜の弾性率に比例した値を、カフ減圧過程における脈波振幅パターンの形状変化から算出します。
正常弾性では山型の振幅パターンを示しますが、中膜硬化が進行すると台形状に変化し、その上底部分の幅がASI値として得られます。
他の動脈硬化評価法と異なり、カフ直下の局所動脈を評価するため、LEAD合併によるABIへの影響を受けません。

メリット

診断的優位性

LEAD患者における最大の死因は冠動脈疾患(CAD)であり、全身性動脈硬化疾患の合併が身体機能・QOLを低下させます。LEAD管理においてCADリスクを定量的に把握し除去することは治療方針の核心となります。
ArterioVisionは複数指標の組み合わせにより、高精度な診断を可能にします。

LEAD診断:ABIに加え、容積脈波(PVR)から得られる2つの補助指標——%MAP(脈波面積比)とUpstroke Time(UT)(脈波立ち上がり時間)——を組み合わせることで、下肢動脈の狭窄・閉塞の有無と程度をより精度高く評価できます。
CADリスクスクリーニング:baPWVおよびBrachial ASIによりCADリスクを判定します。LEAD合併例ではbaPWVは参考値扱いとなりますが、ASIは原理上LEADの影響を受けないため独立した評価指標として機能します。


※測定された全値が正常範囲であった場合でも、動脈硬化症が進行していたり、その他脳・心血管疾患を発症することがあります。本装置の利用にあたっては、他の検査結果や症状を総合的に勘案した上で診断してください。

CLTI(重症下肢虚血)

LEADからCLTIへ:重症化を捉える

CLTIとは

CLTI(Chronic Limb-Threatening Ischemia:包括的高度慢性下肢虚血)は、LEADが重症化し下肢への血流が慢性的に著しく低下した状態であり、安静時疼痛・虚血性潰瘍・壊疽のいずれかを呈します。
CLTI患者の1年以内における大切断率は約25%、死亡率は約20%と報告されており(Conte et al., 2019)、早期介入が予後を大きく左右します。

ABIの基準値

ABI
ABIの基準値
ABI < 0.91
低値異常
0.91 ≤ ABI < 0.99
境界領域
1.00 ≤ ABI < 1.40
正常範囲
1.40 < ABI
高値異常または圧迫不良の疑い

糖尿病患者では動脈の石灰化によりABIが偽高値を示す場合があり、ABIのみによる評価には限界があります。

フットケアへの応用

ArterioVisionをフットケア外来に組み込むことで、以下の臨床フローを構築できます。

ABIとASIの経時変化を定期記録することで、介入タイミングの根拠となるデータ蓄積が可能となります。

生活習慣病予防との連携

動脈硬化リスクの早期管理

生活習慣病からLEAD・CLTIへの進行経路

高血圧・脂質異常症・糖尿病・喫煙は、血管内皮障害と動脈硬化進行を介してLEADリスクを増大させます。LEADは心血管疾患の等価リスク因子として位置づけられており、フットケアの観点だけでなく、全身性動脈硬化管理の一環として評価を行うことが重要です。

ArterioVision MS-3000は、この進行経路の「LEAD段階」を非侵襲的・短時間で定量化し、早期介入の根拠を提供します。

治療効果モニタリングへの応用

生活習慣改善(食事・運動療法)および薬物療法(スタチン・ARB・抗血小板薬等)の効果は、baPWVおよびASIの経時変化として捉えることができます。定期的な計測により、治療反応性の客観的評価と患者への可視化フィードバックが可能となります。

推奨される運用場面

内科・家庭医療科:生活習慣病ハイリスク患者の動脈硬化・LEADスクリーニング(年1回以上)
健診・ウェルネスセンター:無症候性LEADの早期発見
糖尿病内科:HbA1cと並行したABI/ASI定期モニタリング(LEAD早期発見)
循環器科:CADリスク評価の補助指標としての活用

対象

対象診療科

内科学/ 家庭医療
心臓病学/ 循環器内科
内分泌学/ 糖尿病内科
血管外科
フットケア外来

対象ユーザー

医療専門家はもちろん、準専門職においても直感的に操作可能な設計となっています。コンパクトな本体は診療所・外来・健診施設への設置に適しており、定期健診での運用にも対応しています。
臨床研究者/ ストレスマネジメントカウンセラー/ 代替療法専門家/ 理学・作業・レクリエーション療法士/ 心血管リハビリテーション専門家